太田市

戦前の中島飛行機の時代から、ものづくりの街として発展した太田市。財政力指数や病床数、待機児童数などの指標から住みよさを比較した民間調査のランキングでは全国55位と県内トップを走り、県内自治体の多くが人口減少に悩む中、今も高い人口増加率が続く。市内の産業をけん引する輸送用機械器具製造が雇用を創出し、独自の教育・子育て支援策が若い人たちを呼び込み、市の活力を生み出している。

人と自然にやさしく、
品格のあるまち 太田
  • 太田市の躍進をけん引する自動車産業
  • ほとんどの強化を英語で行う英語イマージョン教育に取り組むぐんま国際アカデミー
  • 豊かな自然と歴史を感じさせる太田市のシンボル金山。市民の憩いの場だけでなく市外から多くが訪れる

市長メッセージ

市民ニーズに対応し独自の行政サービス
太田市長 清水 聖義
清水聖義市長

本市は、基幹産業である輸送機器関連企業等を中心としたものづくりのまちとして、これからも多くの雇用の場を創出していきます。併せて、小学校における30人程度学級の実施や放課後に子どもを預かる「こどもプラッツ」、第3子以降子育て支援事業等、今後も働く世代が子育てしやすい環境を充実させていきます。

また、太田駅周辺は人口22万都市に相応しい玄関口として生まれかわります。北口には絵本をメインとした太田市美術館・図書館が建設されます。南口には民間企業主導による再開発ビルの建設と、併せて都市景観やバリアフリーに配慮した公共空間をつくります。

今後も市民ニーズに的確に対応し、他の自治体のモデルとなるべく独自の行政サービスを展開しながら、「人と自然にやさしく、品格のあるまち太田」を目指し、より一層住みやすいまちづくりに努めます。

3人の子育て 「すごくいい環境」

会社員 岡本 和宏さん

富士重工業群馬製作所本工場総務部の岡本和宏さん(36)は横浜市出身。同社野球部に入部したことから2003年に太田市に移り住んだ。06年に妻の愛さん(36)と結婚し、現在は太田市台之郷町の一軒家で長女美海さん(8)、長男健吾君(6)、次男大和ちゃん(2)の家族5人で暮らしている。

岡本さんは、太田の印象について「スポーツが盛んで、地域交流の場がたくさんある。子どもが遊ぶ公園も多い」と話す。健吾君は、岡本さんとよくキャッチボールする自宅近くの公園がお気に入りの場所だ。

山形市出身の愛さんは、子育て支援の充実度を魅力の一つに挙げる。「中学生以下の医療費無料や出産祝い金のほか、児童館もあって子育てするにはすごくいい環境」と満足している様子だ。

夫婦は、3人の子どもの無邪気な笑顔に囲まれながら、こう口をそろえる。「最初は不安だったが、太田に来てよかった」。

生活環境が充実 「住みやすい」

会社員 瀧沢 良洋さん

日野自動車新田工場のシャシ製造部に勤務する瀧沢良洋さん(30)=同市新田嘉祢町=は、今年6月から新田工場に配属され、出身地の東京都府中市から太田市に移住した。

瀧沢さんは当初、太田のイメージは「田舎で何もないとこなのでは…」と不安に思っていたが、配属されてから約5カ月間の生活で不便に感じることはなく、住めば都だったという。

「大きな商業施設や夜遅くまでやっているスーパーもあるので、買い物や食事に困ることはない。思っていたよりも住みやすい」と気に入っている。市内に多くあるラーメン店を回るのも、今後の楽しみの一つだ。

川や山などが近い自然豊かな風景も魅力だといい、「まだ知らない湯所が多いので、市内を散策してお気に入りの場所を見つけたい」と心を躍らせている。

潜在力生かし 魅力的な街に

若手起業家 山鹿 直子さん

「経営環境として理想的だった」―。2013年5月に太田市富沢町にセレクトショップ「ハローマーケット」を開設したデザイナーの山鹿直子さん(42)は、起業の地をこう評価する。都内と比べて十分な店舗スペースを確保できる上、日帰りで東京への服の買い付けも可能だからだ。「じっくりと地固めしながら経営を軌道にのせることができた」と振り返る。

山鹿さんは山口県出身。文化服装学院(東京)でパターンの描き方などを学んだ。都内の婦人服企画製造会社で人気ブランド「grin(グリン)」を立ち上げた経験がある。夫で社長の雅明さんとの結婚を機に、同市に移住した。15年から展開する自社ブランド「to touch」の販路は全国に広がった。

「地域の潜在力は高いが生かせていない」との思いから昔ながらの市内の飲食店を無償でプチプロデュース。老若男女が集まりやすい店に生まれ変わらせた。「お金をかけない小さな変化を重ねるだけでもっと魅力的な街になる」。山鹿さんの太田でのチャレンジは新たな局面に入った。

高級感前面に ブランド化

小玉スイカ農家 永田 智久さん

藪塚の小玉スイカを全国ブランドに育てたいー。太田市大久保町の農家でJA太田市スイカ部会長を務める永田智久さん(42)は夢を抱く。部会では3年前に梱包用段ボールのデザインを一新、「藪塚こだま西瓜」と名付けて産地の統一ブランドにした。金色のシールを貼って高級感を前面に押し出す。

永田さんは勢多農林高を卒業し、東京農業大短期大学部で農業を学んだ後、23歳の時に2代目スイカ農家として就農した。藪塚地域は水はけのいい砂地でスイカ栽培に適し、産地としての歴史は50年ほどになるという。シャリシャリとした食感で、甘みの強さが売り。「スイカ産地としての潜在力は高い」と考える。

部会には約40農家が所属している。最盛期よりも生産者は減っているものの今年は約13万8千ケースを出荷した。20代の若手農家もいて産地として勢いは衰えていないといい、「まだまだ魅力ある農業ができるJと鼻息は荒い。ブランドカの強化を課題に掲げ、PR活動に力を入れていく考えだ。

文化・スポーツ

新たな文化活動の拠点がオープン

文化活動の新たな拠点が相次いで誕生する。東武太田駅北口に市美術館・図書館が2017年1月にプレオープン予定。1501席の大ホールを持つ市民会館は同年3月半ばに竣工記念式典が開かれる。ともにシンボリックで存在感のある建築になっている。

美術館・図書館はワークショップを通して市民参加型で在り方を検討してきた。約5万冊(開架分)の蔵書は海外を含めた絵本のラインアップが充実する見通し。屋外緑化とカフェなど立ち寄りたくなるおしゃれな雰囲気も魅力だ。

市民会館は飯田町から飯塚町に移転。最新の音響設備を持ち、オーケストラや演劇などさまざまな演目に対応可能。スタジオや多目的室は市民の発表の場としても愛されそう。

スポーツも勢いがある。社会人野球の都市対抗やニューイヤー駅伝で富士重工業のチームが活躍。龍舞町にホームグラウンドを持つラグビートップリーグのパナソニックワイルドナイツはリーグ3連覇中。


子育て支援策

少人数クラスできめ細かな指導

小学校の教室で子供たちが発言しようと、競って手を挙げる―。そんな光景が増えてきたのは市が独自に取り組む小学5、6年生の「30人程度学級」の成果。1クラスの人数を国基準の40人より抑え、25~35人程度にする。きめ細かな指導が可能になり、生徒も発言や活躍の機会が増える。クラスが増える分、必要となる教諭は市が独自に雇用している。

30人程度学級をはじめ市は「元気な子ども」を増やそうとさまざまな施策を展開している。月3000円で放課後の子どもたちに安全・安心な居場所を提供する「子どもプラッツ」もその一つ。放課後児童クラブ(学童)より短時間とはいえ、料金を抑え、学校の空き教室などを使ってスタッフの地域住民らが見守る。

低料金で食事を提供する「こども食堂」も来年度から市内全域で本格的にスタートする計画。学校給食費は来年度から、第3子全額助成に加え、第2子半額助成に広げるなど子育て環境のいっそうの充実を図る。


旧中島家住宅

国の重文となった「飛行機王」の邸宅

昭和初期の近代和風建築を代表する建物として今年7月25日に国指定重要文化財となった旧中島家住宅(押切町)。富士重工の前身、中島飛行機を創設した中島知久平(1884~1949年)が両親のため生家近くに建てた。

車寄部、客室部、居間部、食堂部の四つの建物が中庭を囲んで「口」の字に並ぶ。宮殿建築のノウハウも取り入れた建物は大阪城の復元天守閣の2倍以上の金額で建てられたとも伝わる。ステンドグラスや大理石の暖炉など隅々までぜいを尽くしている。

和洋折衷の堂々とした邸宅は「飛行機王」と呼ばれ、「ものづくりのまち太田」の礎を築いた知久平の勢いをそのまま表現したようだ。