第8回 センパイとの出会いが、 行動を変える勇気をくれる

[2019/05/29]
NPO法人DNA(デザイン・ネットワークス・アソシエーション) 代表理事 沼田翔二朗さん
「自分の夢は何か」を問われて、大きな声で答えることができる人は、実は少ないのかもしれません。人生のロールモデルが少ない高校時代なら、なおさらです。「何かしたいけど、どうしたらいいか分からない」。もやもやした思いを言葉にできる機会をつくることは、自分が望む人生を描く第一歩になります。NPO法人DNA(沼田翔二朗代表理事)が手掛ける「未来の教室」は、高校生が自分の意欲に気付き、行動に踏み出すための学びの場です。

NPO法人DNAは、どのような活動をしていますか。
沼田

DNAは若者の社会活動を支援するNPO法人です。2004年に高崎経済大学地域政策学部の大宮登教授(当時)と、そのゼミ生が中心となって設立しました。当初からの活動目的は、大学生が地域社会と関わる中で社会性を身につけることです。若者就職支援センター「ジョブカフェぐんま」の立ち上げや、富岡の中心市街地を活性化する「げんきフェスタ」の手伝いなど、15年の間にさまざまな地域事業に関わってきました。
私は高崎経済大学2年でDNAに参画しました。大学院に進んでも活動は続けていましたが、当時は代表としてDNAに就職するとは考えてもいませんでした。考えが変わったきっかけは、都内で開催された社会起業家のアカデミーに参加したことです。同じ年代の社会起業家が地域課題を解決するアイデアを次々と語る中、私は語るべきビジョンが何もなかった。それがとても悔しくて。
私はDNAを通じて、さまざまな人や地域とつながりを得ることができました。それをただのラッキーで終わらせず、もっと若い世代に届けたいと思ったのです。そこで、DNAの中で高校生を対象にした教育プログラム「未来の教室」を始めました。

DNAの活動について語る沼田さん
「未来の教室」では、どんなことを生徒に教えるのですか。
沼田

先生は大学生や社会人など、高校生より少し年上の先輩たちです。でも先輩たちは「教える」のではなく、生徒の考えを対話によって伴走し、ともに考えていく授業です。一般的な職業講話は先輩の体験談を聞くだけですが、「未来の教室」は自分の「やりたいこと」や「好きなこと」を先輩に話したり、書き出したりして客観的に考える機会になります。

対話というステップを踏むことで、生徒は自分の本当の気持ちを言語化することができます。例えば「あなたの夢は何ですか」といきなり聞いても、答えられないか、または職業で答える生徒が多いでしょう。「将来の夢は先生」と答えた生徒がいたら、「なぜ先生になりたいの」と聞きます。子供と関わるのが好き、人に教えるのが得意、などいろいろな理由が上がると思います。ならば「なぜ人に教えるのが得意なのか」。対話で問いを投げかけることで、生徒が心に秘めた「なりたい自分」の姿に気付いてもらえるのです。

吉井高校で開催された「未来の教室」。 対話研修を積んだ先輩が、生徒の悩みや意欲を聞いて話し合う=2016年
少し先を生きる先輩の言葉は、高校生にどのように響くのでしょうか。
沼田

「私、今からでも変われるんですね」―。「未来の教室」に参加した後、こんな感想を寄せてくれた高校生がいました。自分はこんな人間という「キャラ付け」が一度決まってしまうと、そこから外れられない生徒もいます。同調圧力をはねのけて変わりたくても、変われずにいるのです。

私も同じでした。実は大学1年生の時、大学に行けず引きこもっていた時期があります。高校3年で親友とけんか別れして、地元の北海道から逃げるように高崎経済大学に進学。人と関わることに怖さがあって、大学でも新しい友達づくりに失敗してしまいました。

自分は社会に必要とされていない―。理想と現実の自分を比べて、落ち込む日々が続きました。そんな時、バイト先の先輩の優しさに救われました。仕事終わりに対人関係や学校生活の悩みを聞いてくれて「大丈夫だよ」と励ましてくれた。自分の「もやもや」を言葉にすることで行動につながり、2年の春には大学に戻ることができました。

「未来の教室」で自分の経験を話す先輩ボランティア=2019年5月、高崎北高校
「未来の教室」は、どのくらいの学校が導入しているのですか。
沼田

「未来の教室」は4年前に事業を始め、導入高校は県内で延べ20校、生徒3750人、ボランティアスタッフで参加してくれた先輩は1500人に上ります。富岡や高崎、桐生を中心に知名度も上がっており、課題解決型の学びが重視される学習指導要領の改訂も普及の後押しになると期待しています。

今の高校生は「主体性」がないと、よく言われます。それは本当でしょうか。高校生の7割が「挑戦したい」と思っているというデータがあり、みんな「何かしたい」という意欲は持っているのです。ところが実際に挑戦している子はたったの1割。意欲が行動に結びついていないだけなのです。
「未来の教室」でリーチしたいのは、そんな「もやもや」を抱え、自分の意欲に気付かずにいる生徒たちです。だからイベントではなく学校の授業で実施するのです。来てください、ではなくこちらから出向いて行かなくては出会えないのです。

「未来の教室」について説明する沼田さん
DNAはことし創業15年を迎えます。今後の目標は。
沼田

「戦後最大の教育改革」と言われるように、学校での学びが大きく変わろうとしています。その鍵となるのが、新学習指導要領の要である「社会に開かれた教育課程」だと考えます。人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)の進化によって社会は大きく変化しています。学校教育も地域や社会に開かれた存在となって、次の時代を生きる子供たちのために豊かな学びを実現しなければなりません。
DNAは創業15周年を記念して、6月22日に高崎経済大学で「社会に開かれた学びカンファレンス」と題したシンポジウムを開きます。県内の教育界をけん引する方々を招いて「未来の教育」について話し合うほか、さまざまなテーマの分科会を開催します。
群馬の教育に関心のある方ならどなたでも参加可能です。これからの群馬の教育について、ぜひ一緒に考えてください。

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