高山村

緑豊かな山々にいだかれ、景観に優れた高原地帯に位置する高山村。四季折々の花が咲きほころび、秋には黄金色の棚田が田園風景を輝かせる。現在、道の駅「中山盆地」を核とした交流拠点づくりが活発だ。温泉やキャンプ場、高原牧場、きらめく星空など、地域資源にも恵まれたこの地での暮らしを愛し、「人とのつながり」を紡ぎ出す人々にスポットを当てた。

田んぼアート研究会

田園風景の魅力増

のどかな田園地帯を山々が囲む風光明媚な中山盆地。その一角で2009年から「田んぼアート」がスタートし、今年で10回目を迎えた。運営しているのは、村役場の有志職員・OBからなる「田んぼアート研究会」だ。

現代米に加え古代米を数種類用い、緑・黄・白・赤・紫などの稲が田んぼを彩る。描かれているのは、主として「ぐんまちゃん」などのキャラクター=写真上。研究会のメンバーが設計し、毎年6月初めに、みどりの協力隊などのボランティアとともに田植えを行う=写真下。稲の成長とともに色が濃くなり、巨大な「田んぼアート」がくっきりと姿を表し、7月半ばから8月が最盛期となる。道の駅「中山盆地」が最高のビュースポットだ。

会長を務めるのは佐藤晴夫さん。「訪れた人に喜んでいただけることがやりがいです。これからも続け、道の駅を盛り立てていきたいですね」と意欲的に語る。

アサギマダラの会

道の駅彩るチョウ

アサギマダラは、浅葱色のまだら模様の羽を持つ渡りチョウ=写真右。2014年、アサギマダラが飛来する休息地が道の駅「中山盆地」駐車場北側の一角に整備された。アサギマダラが好むフジバカマという山野草が植えられている。整備したのは、「アサギマダラの会」の有志8人。同年9月に飛来が確認されると、さらに同駐車場の南側にも植えた。以来、毎年9月になるとアサギマダラはここで数日間休息した後に南方面へと向かっていく。期間中は美しく幻想的なチョウを写真に収めようと、多くの人々がカメラを構える。会長の後藤友良さん=写真左=は「アサギマダラは六合方面から赤城自然園へと向かうよう。道の駅『中山盆地』が飛来地として多くの人に知られるようになればいい」と語る。

蛙トープ

美しい里山の真ん中にある「蛙トープ」は、民家の一室を家族で改装したショップ、元々農機具小屋だったギャラリー、そして工場を廃材で加工したイベントスペースのカエル舎からなる。

飯塚武久・和子さん夫妻と長女の咲季さんが運営する。前橋で公務員生活を送っていた武久さんの実家を週末ごとに家族で改装し、ショップをオープンしたのが6年前。しばらくは日曜のみの営業を続けていたが、武久さんの定年を機に3年前、完全に移住。敷地内にギャラリー、カエル舎も手作りで改装した。

「暮らし」をベースに
交流の場を手づくり

和子さんは手織り、咲季さんは刺し子の作家でもあり、ショップでは2人の作品に加え、布小物、陶磁器、木工、ガラスなど、作家による作品を販売する。営業日(日・月・金)を楽しみに村内外から多くの常連が集う。ギャラリーでは、展示会やワークショップに加え、咲季さんによる刺し子教室も行う。カエル舎は、カフェとして利用されることもあれば、イベントが行われることもある。

「人と人がつながる『場』をつくろうと思ったのが始まり。ショップをきっかけに村内外に交流が広がり、現在のようなスタイルになりました」と和子さんはいう。

蛙トープのスタンスは、「暮らし」がベース。「中心に高山村の暮らしがあり、楽しみながら面白い暮らし方をしている人がつながり、村内外の交流が生まれてきました」と語るのは咲季さん。咲季さんは、蛙トープを拠点に「暮らしのシューレ」を主宰し、仲間たちとともに自然農を実践する「暮らしのファーム」や、暮らしの市、暮らしの知恵と技術を学び合う研究室、ファーム産のハーブをはじめオーガニック商品の紹介やカフェなどを開く。

「村にある資源を生かし、高山らしい暮らしを営むことで、おのずと景観も魅力的になる」と咲季さん。移住希望者と空き家のマッチングに挑戦したいという目標も持つ。

キミドリファーム&キッチン

平形清人・佐和美さん夫妻が立ち上げたキミドリ・ファーム&キッチンは、有機栽培を行う農園。昼夜の寒暖の差が大きい高原地帯にあり、農産物の栽培には最適な土地だ。2人は自然循環型の農業を基本に、以前暮らしていたカナダで知ったビーツや在来の高山きゅうり、トウモロコシをはじめ、さまざまな旬の野菜を栽培している。ビーツパウダーや干し芋などの加工品も生産する。これらの農産物・加工品は、地元の道の駅での直売のほか、ネットなどによる通販も行う。「地域の先輩方からいろいろ教えていただき、試行錯誤しながら有機栽培を追求しています」

“ファームスティ”推進
国籍・年齢問わず交流

西洋の伝統野菜ビーツはボルシチでも知られ、その高い栄養価から「飲む血液」とも言われるスーパーフード。2人は、加工品づくりやレシピ開発を通して、ビーツの魅力拡散に力を入れている。

もう一つ、力を入れているのが、「ファームスティ」。お金のやりとりなしで食事や宿泊場所と労働力を交換する「WWOOF」(ウーフ)などを通じて、年齢、性別、国籍を問わず、年間20組ほどを受け入れてきた。 ホストとして食事と寝る場所を提供し、訪れる人には草取りや収穫など農作業を手伝ってもらう。訪問者は数日から2週間滞在する。2ケ月ほど滞在した人もいるそうだ。「一緒にご飯を食べたり、仕事をしたり、家族みたいに交流する。時には子どもたちの面倒を見てくれることも。農園を経営していると、自分たちが旅に出ることはできませんが、さまざまな国から人が訪れ、その話を聞いているだけで面白く、旅に出たような気持ちになる」と清人さんは笑う。

訪れた人は、おぎょん(祇園祭)など地元のイベントにも参加し、地元の人たちもそれを自然に受け入れる。「一緒に暮らし、交流することで、文化の違いを認識します。その違いを知り受け入れることで、さらなる交流につながっていく」。平形夫妻は、これまでの交流経験を生かし、農家民宿を始めたいという構想も抱いている。

イルミネーション とカフェ

道の駅「中山盆地」では、今冬よりイルミネーションを開催する。同所に期間限定でオープンする「星空cafe」では、冷えた身体を温める飲み物や地元の食材を使ったメニューを提供する。Cafe内ではクリスマスリース作りなどのワークショップも開催予定。高山村には県立ぐんま天文台があり、光環境条例で守られている星空を望遠鏡を使って天体観測できる日も。

人とのつながり

高山村長 後藤 幸三

高山村では現在、道の駅「中山盆地」を核に、村の中心地づくり構想を進めています。若い人たちを中心としたプロジェクトチームを立ち上げ、これからの高山村のあり方や道の駅に整備を計画している「観光交流館」のあり方等について熱心に議論していただいています。今後、道の駅を中心とした交流人口がさらに広がることを期待しています。 道の駅「中山盆地」では、今冬よりイルミネーションを開催する。同所に期間限定でオープンする「星空cafe」では、冷えた身体を温める飲み物や地元の食材を使ったメニューを提供する。Cafe 内ではクリスマスリース作りなどのワークショップも開催予定。高山村には県立ぐんま天文台があり、光環境条例で守られている星空を望遠鏡を使って天体観測できる日も。