伊勢崎・ キシモトさん 「家族で仕事」 楽しむ ブラジルの 味が人気

ハンバーガー店で働くトシコさん(左)とアキミさん。 日本人の客も少しずつ来店するようになった

伊勢崎市中心部よりやや東。県道前橋館林線沿いにあるハンバーガー店「KMT」(同市日乃出町)で、来店客が食事を楽しんでいた。飛び交うのはポルトガル語。日系ブラジル人2世のキシモト・ケイフク(52)、トシコ(63)夫妻が始めた店には、懐かしい味を求める同郷の人たちが足を運ぶ。

「『うまい』『また来る』と言われるとうれしい」。店を手伝う長女のアキミ(27)は、ほほ笑みながらこう続ける。「ハンバーガーは料理好きの母が考案したオリジナル。ここでしか食べられない」

夫妻が子ども3人と共に来日したのは1999年。自分たちのルーツであり、先に来日していた親戚から日本の住みやすさを聞いたのがきっかけだった。

県内の会社で働いた後、不況で一時は親戚のいる愛知県や茨城県に引っ越したが、再び群馬に戻った。「静かで住みやすく、自然災害も少ない。子どもたちも安心して過ごせる」とトシコは実感を込める。

愛知にいる間、ケイフクの姉のカラオケ店を手伝い、調理を担当した。この経験が、家族で店を始める自信に。2年前に伊勢崎市で弁当店を開店した。

豚のさまざまな部位を煮込んだ「フェイジョアーダ」などのブラジル料理は同郷の人たちの人気を集めた。店内で食べられる店が欲しいという客のリクエストを受け、今年2月、隣でハンバーガー店を始めた。

看板メニューは「X―TUDO(シス・トゥド)」と呼ばれるハンバーガー。シスはチーズ、トゥドは「全部」を意味するという。日本の一般的なものより一回り大きなバンズに、ハンバーグのほか、野菜やベーコン、卵が入りボリューム満点。メニューの考案から調理全般までトシコが担うが、ハンバーグを焼くのはケイフクの仕事だ。

パステオというブラジル風の揚げギョーザや、日本でもブームになったアサイーボウルもある。「日本人にも味わってほしい」と、アキミはメニューを日本語に訳すつもりだ。

店では長男のケイフクジュニア(29)の妻、エリカ(31)も働く。今は出産に備えて休んでいるが、アキミの双子の妹のアキナ(27)も手伝っていた。弁当店は月曜から土曜まで、ハンバーガー店は水曜から日曜まで営業しており休みはない。それでもトシコは「家族で仕事をできるのがうれしい。いつも楽しんで働いている」と幸せを感じている。

(敬称略)