渋川・ 堀井さん 夢膨らむ 加工品開発 手作り窯で 収穫物調理

手作りの窯でさまざまな食材を調理する堀井さん夫妻

赤城山西麓にたたずむ古い民家。横浜から移住した堀井一平(39)=渋川市赤城町=と家族が暮らすその家の庭に、縦横2メートルほどの「アースオーブン」と呼ばれる窯がある。数年前、れんがと石、粘土を使い、一平が手作りした。

冬晴れの午後、窯に火を入れた。温度を十分に上げ、自身が収穫したネギやニンジンなどを収めた容器を入れる。妻の裕紀(36)が、隣接する畑で収穫した小麦を使ったパン生地を持ってきた。窯に入れ数分で、野菜の蒸し焼きや手作りパンが出来上がった。長女の麦音(3)がやってきて、試食する。

友人や知人が訪ねてきたときなどに、この窯で調理した料理を振る舞うことが多い。「カボチャを丸ごと入れたり、パエリア風のご飯を炊いたり。家族で食べるパンを焼くこともあるけれど、忙しい時期はなかなかできない」。特別な“イベント”もない日に窯を使うのは、この時季ならではの楽しみだ。

通年で野菜を栽培しているものの、年明けから春先までは収穫、出荷できる野菜は少ない。今はネギ。越冬させて3月くらいまで出荷できるという。年間、数十種類の野菜を少しずつ栽培する2人。波はあるものの、春から秋にかけては日々、栽培と収穫、出荷に追われる。冬はそんな慌ただしさを気にすることなく、好きなことをできる大切な時間だ。

アースオーブンを作ったのも冬、農機具を収容する小屋を建てたのも冬だった。一平は「離れを片付けたり、家を修理したり。『今年は何を作ろうかな』なんて考えるのは楽しい」と笑う。

レタスやキャベツの種まきを始めるのは2月中旬。それまでにやっておきたいことがある。「昨年はブロッコリーの種をまくのが遅れ、収穫がいまひとつだった。春キャベツも遅くて、虫食いだらけ。いろいろと失敗している。改善しなければならないことは結構ある」。昨夏は大雨でまいたばかりの種が流されたことがあった。そんな事態への対策も必要だ。

収穫した野菜は出荷するだけでなく、加工して販売している。新商品の開発はやはりこの時季。「加工品の幅を広げたい。既に新しい商品を試作している」と裕紀。できる限り収穫した野菜を使い、それを強みにして売っていく。そんな夢の実現に向け、2人の試行錯誤は続く。

(敬称略)