渋川・ 堀井さん 多品種栽培に充実感 7年目 試行錯誤で自信

自宅に隣接する畑で、 協力して農作業に取り組む一平さん(左)と父の良夫さん

横浜市から移住した堀井一平(39)=渋川市赤城町=は、無農薬で多品目の野菜を少しずつ生産している。さらに収穫した野菜の加工品を製造販売。この時期は、ナスやオクラ、中華料理やタイ料理の炒め物などに使われる「空芯菜」といった夏野菜の収穫・出荷が本格化する前の端境期だ。7月下旬には再び目まぐるしい日々がやってくる。

「6月はレタスの収穫と出荷、他の野菜の植え付けなどで忙しかった。そのレタスの出荷が終わって、一息ついたところ」。一平の顔には充実感が漂う。「旬の野菜を食べてもらえるし、輪作にして病気を抑える。多品種少量生産のメリットは大きい」。移住して7年目。試行錯誤の中でつかんだ自信がにじむ。

ただ、農作業は大変だ。収穫と出荷は毎日。キュウリやズッキーニといった果菜類は朝だけでなく、夕方も収穫する。天気を気にしつつ、種まきや苗の植え付けに加え、イベントで販売する製品も作る。土日だからといって休めるわけではなく、天気や農機具の故障で、予定を変更せざるを得ない場合もある。

5~6月は、品質や安全にこだわりを持つ生産者らが集まるイベントに、毎週のように参加。県内だけでなく、埼玉や東京にも出掛けた。「主催者に直接依頼されることもあるし、仲間に紹介してもらうこともある。横のつながりを大切にしたいので、できる限り参加している」。8~9月にも既にいくつか予定が入っている。

「たくましくなった」。一平の父、良夫(67)は、そんな息子を頼もしそうに見つめる。

横浜市で工務店に勤務していたが、今年2月、妻のルミ子(66)と共に移住した。「老後を考えたとき、環境を変えてもいいんじゃないかと思った」。息子夫婦が暮らす民家の前に住宅を新築。「自由にやらせてもらっている。イヌの散歩や孫の世話、趣味の陶芸、草むしり。頼まれれば農作業を手伝う」

それまで農業とは無縁の生活だった。間近で見た農業について良夫は「思っていたより大変。労力の割に、収入が少ないのでは」。それでも息子のやり方に口を出すつもりはない。一平は言う。「自分で食べるものを自分で作る自給自足の延長で農業をやっている。父も分かってくれると思う」。父と息子が直接交わす言葉は多くはないが、気持ちはしっかりと通じている。  

(敬称略)