館林・ 佐藤さん一家 人の温かさに触れ 「幸せ」 出産控え 体調気遣う

お客さんの好みや注文に合わせ、 焙煎するコーヒー豆を選ぶ雄一郎さん

酷暑で知られる館林市も10月に入ると、長袖姿の人が増えた。コーヒー専門店「copicopi」(同市新宿)では、横浜市から移住したマスターの佐藤雄一郎がシャツの袖をまくって焙煎(ばいせん)室と喫茶コーナーを行ったり来たりしていた。

得意のドリップや接客の合間に、焙煎中の豆の様子をうかがう忙しい毎日。立ちっぱなしで足が痛む日もあるが「新しい家族が増えるってなって、今の僕、いままで以上に気合入ってます」と苦にしない。

責任感が強くなり、これまで気にしなかった自分の健康も考えるようになった。来年出産予定で、一緒に店を支える妻、早苗は奥の自宅で休憩中で「今はできるだけ体を大事にしてほしい」と優しく笑う。現在は営業時間を短くしたり、休業日を増やすなどバランスを取っている。

運動とは無縁の生活を送っていたが、9月になってヨガを始めた。指導するのは、常連のお客さん。雄一郎の体が硬すぎるのを見かねて、提案してくれた。続けられる自信がなく、二の足を踏んでいたものの「健康第一でしょ」と背中を押され、毎週お客さんの自宅で指導を受けている。

「copicopi」の常連客は、雄一郎と早苗を家族のように支えてくれるという。早苗の体調を気遣った差し入れは日常茶飯事で、店のスイーツを作れるパティシエを紹介しようとしてくれる人も。栃木県足利市から通う宮崎伸枝さんもその一人で「娘、息子みたいに、なんだか応援したくなっちゃうのよね。コーヒーがおいしいから来てるのもあるけど、2人の人柄がすごくいい」

2人は宮崎さんの紹介で、9月上旬に足利市の特別養護老人ホーム「義明苑(えん)」のお祭りに参加。店の外に出て、イベントに出店するのは初めての挑戦だった。必要なものがそろう店と違い、限られた中でコーヒーを振る舞うことや一度に大勢の人に提供することの大変さを味わったが、来場者やスタッフからの反応もよく、貴重な経験になった。

雄一郎は「チャンスをもらえたおかげで、次の挑戦も考えられるようになった。外に出られれば、たくさんの人にcopicopiを知ってもらえる」と今後もイベントに参加したいと考える。

雄一郎にとって今年の秋は、いつになく人の温かさを感じる季節になった。「いっぱい、いっぱいだけど、幸せ。コーヒー一杯一杯を大事にいれて、みんなに喜んでほしい」と冗談でお客さんを笑わせながら、今日も丁寧にドリップする。

(敬称略)