思い新た 未来描く 家族の成長 日々の活力

朝晩の冷え込みが厳しさを増し、山々は白く姿を変えている。だが県内に移住した四つの家庭には寒さに負けない子どもたちの元気な声が響く。増えた家族に力をもらい、成長を見守りながら新天地で暮らしていく思いを新たにしている。

高崎 自宅で休日を過ごす(左から)忍さん、和佳奈ちゃん、遼太郎君、功さん
片品 ギターを弾く寛明さん(右)のそばで嵩倫ちゃんをおんぶする睦泰君(中央)と、のぞみさん

広がる人脈

 暖かな日差しが入る部屋で、長男の遼太郎(7)と長女、和佳奈(5)がソファで元気いっぱい飛び跳ねる。小学校や幼稚園の冬休みが終わり、高崎市の阿部功(41)一家に日常が戻ってきた。年末年始は埼玉県熊谷市にある忍(45)の実家で餅をたらふく食べたり、高崎を訪ねてきた親戚の子どもたちとにぎやかに過ごしたり。「壁の落書きも増えたんですよ」と功が笑う。

功は専業主夫をしながらさまざまな活動に取り組み、人脈を広げている。一方、夫婦が最近気になっているのは近所の他世代とのつながり。忍は「何かできることがあるのかなと思いつつ、なかなか手が出せないところ」と打ち明けた。

優しい旋律

尾瀬国立公園は長い冬に入り、片品村の歩荷(ぼっか)、五十嵐寛明(41)は村内のスキー場と川場村の酒蔵で働いている。雪がちらつく1月の午後、寛明は久しぶりに愛用のアコースティックギターを押し入れから引っ張り出し、爪弾いた。夕方からの仕事を前に、心身をリラックスさせる時間となった。

優しい旋律が響く中、長男の睦泰(ともやす)(8)と次男の嵩倫(たかみち)(1)がじゃれ合っている。妻ののぞみ(34)は「夏場の歩荷の時も疲れ切っているが、冬は眠そうで無口になる。よくやってくれていると、ありがたく思っている」と家族を守るためハードな日々を送る夫をねぎらった。

下仁田 旺己ちゃん(中央)の成長に笑顔を見せる優希さん(左)と香輝さん
館林 休日にお気に入りのつつじが岡公園を訪れる(左から)早苗さん、龍ちゃん、雄一郎さん

膨らむ想像

 生まれて5カ月を迎える旺己(おうき)は、表情が豊かになってきた。沼田香輝(25)と優希(29)は、わが子がこの下仁田町でどんな成長をしてくれるか、想像を膨らませ、楽しみにしている。香輝が町の老舗食堂「一番」で働き始めて丸2年。「味の継承」という任務で町地域おこし協力隊として赴任したが、味と共に、店も守っていきたいという思いが強くなっている。

香輝は、「一番」のカウンターで旺己が友達と学校の宿題をする姿や、自身が子どもたちにサッカーを教える姿をイメージすることがある。「ここは、自分が楽しいと思う未来を実現できる町」。この思いを日々強くしている。

気持ち和らぐ

 館林市の佐藤雄一郎と早苗夫婦にとって、移住して迎える3回目の冬がやって来た。思い切り遊べるつつじが岡公園はすっかり長男の龍(3)のお気に入り。早苗も城沼越しに目に入る山並みを見るたびに「いいところだな。都会にはない景色」と気持ちが和らぐという。

2人目の子どもをおなかに抱える早苗。体調が安定し、夫婦で営むコーヒー専門店「copicopi」に顔を出せる日が増えた。家族が増えることで店の経営と育児の両立は忙しくなるかもしれない。それでも人の温かさを感じられる街で暮らす夫婦の思いは同じだ。「何とかなる気がする。やるしかない」

(敬称略)