新天地 確かな歩み 家族や仕事 笑顔いっぱい

平野部を彩ったサクラ前線が歩を進め、山あいの集落に春の訪れを告げている。長い冬を乗り越えた山々では山菜が顔を出す時季となった。移りゆく季節の中、新天地として群馬を選んだ家族が、県内各地で地域とともに歩み始めている。

片品 尾瀬の“物流”を支えてきた五十嵐さん(左)。 家族とともに豊かな自然環境の中での暮らしを満喫している
下仁田 「一番」の味を習得しようと、自宅でもギョーザを作る沼田さん(右)。 伝統のメニューを引き継いでいこうと決めた

長男誕生で決心

一足遅い春を迎えた片品村。国立公園化10年となる尾瀬には、これから多くの観光客が訪れる。福島県出身の五十嵐寛明(40)は山小屋に荷物を運ぶ「歩荷(ぼっか)」を続けてきた。

「仕事があったから」というきっかけだったが、7歳の長男誕生を機に住宅を購入、この地で生活していく決心をした。シーズン以外はスキー場や蔵元でも働き、家族4人と愛犬で豊かな自然を楽しんでいる。

老舗メニュー守る

下仁田町では「食の伝承」を任務とする地域おこし協力隊員として千葉県から赴任した沼田香輝(24)が、名物のタンメンとギョーザの味を受け継ごうと修業中。こだわりを持つ“食”が、この土地との縁を生んだ。

中心街に残る昭和レトロな雰囲気を観光面に生かそうという動きが注目されている。夫婦二人三脚で長年愛されてきた老舗「一番」の看板メニューを守り、地域を盛り上げたい考えだ。

館林 こだわりのコーヒーが評判の佐藤さん(左)。 店を地域のコミュニティーの場として発展させたいと考えている
高崎 「専業主夫」として家族を支える阿部さん(左)。 サークルなど地域の子育て活動にも積極的に関わっている

地域の交流拠点

ツツジでにぎわう季節を迎えた館林市。横浜から移り住み、自家焙煎のコーヒー専門店をオープンした佐藤早苗は子育てと店舗経営の両立へ奮闘する日々が続く。

「いらっしゃいませ」。自慢の味とともに、おもてなしの心が伝わる笑顔も店の大きな魅力。今月で1周年となった店内には人を引きつける独特の香りが広がり、地域の人たちの集う場になりつつある。

会社辞め専業主夫

「自分がいろいろな人に助けてもらったので今度は自分が」。会社を辞めて専業主夫となった阿部功(40)は、新たな地元となった高崎市で子育て支援活動に取り組む。

宮城県出身で都内でサラリーマン生活も経験したが、出産を経て自分が看護師に復職すると言ってくれた妻とも話し合い、悩んだが決断した。仕事に忙殺され家族と距離が生まれた時期を乗り越え、自分なりの家族像を模索している。

(敬称略)